子供時代のことで、どうしても忘れられない、というか経験したその時より、今の方がより鮮明に目の前に浮かぶような思い出がある。。
私が小学校の1年生だか、2年生の頃の話だ。
私の父は仕事が忙しく、あまり私たち兄妹を何処かに連れて行ったり、一緒に遊んでくれたりすることはなかった。
だからなのだろう、父との思い出はなぜかよく覚えているような気がする。
ある日の日曜日。父は私たち兄妹に言った。
「この近くの川に魚釣りに出かけよう!」
兄、姉、そして私はとても喜んだ。
子供の頃は、自分が小さいせいで、何もかもがとてつもなく大きく見えるが、その川もとても広いように思った。それに加え、雨上がりだったのだろう、川は増水して茶色の水がかなりの勢いで流れていた。
早速、みんなで釣りを始めた、釣れるは釣れるは。。。釣り糸を垂れた瞬間に魚がかかる、そんな勢いで釣れるので、みんな大喜びだった。
その川べりは、魚を釣る人が多いのか、トタン板で台が作られていて、足が泥だらけにはならないようになっていた。しかし、雨上がりで、さらに増水をした川の水がトタン板を濡らし、とても滑りやすかった。
さぁ、そろそろ帰ろう、と父が言い出し、世話好きの姉が片付けを始めたその時、
姉が足を滑らせて、川の中に落ちた。
あっと言うもなく、姉は流れの速い川に飲み込まれるように遠ざかった。
父は、迷わず川に飛び込んだ。
姉の所まで猛烈な泳ぎで、辿り着いた、と思ったら、二人の姿が消えた。
兄は、私の手を握って言った。
「絶対に、ここを動くんじゃないよ。必ず、父さんとお姉ちゃんを連れて帰るから、待ってて。」
そして、飛び込んだ。
兄に言われた通り私は一歩も動かず立ちん坊のまま、姉、父そして兄が流されていった方向を見つめていた。
どこからともなく彼らは戻ってきた。みんなびしょ濡れで、姉は大きな声で泣いていたような。。。
この辺りで私の記憶はあやふやになり、よく覚えていない。
家に帰った時、父が母に言った。
「魚釣りの最後にみんなで泳いだんだ!」
母に心配をさせたくなかったのか、増水した川に子供を連れて出かけたことを責められたくなかったのか、父は笑顔で子供達を見まわし、
「なっ、そうだよな!」
と言った。
あの川の色、トタン板の錆び付いて汚らしく、歩きにくかったこと、バケツに入りきらないほどの魚がピチピチと飛び跳ねていたこと。。。まるで、映画のワンシーンのように、くっきりと頭に残っている。
そして、あんなに恐ろしく、不安で悲しかったことは今までにない。
今日の紹介は、”Das Flohspiel im Kunststoffpilz” (プラスチックキノコでおはじき)という子供のゲーム。
だいたい、ゲームの名前に芸がないよなぁ、と思う。子供用のゲームならば、もっと子供が喜ぶような名前をつけても良さそうなものだが、概してドイツの物は、味もそっけもない名称が多いような気がする。
遊び方は、付属の紙にいろいろと説明してあるが、子供には結構難しいゲームだ。日本のおはじきより、相当難易度は高いと思う。
基本的には、チップを弾き飛ばしてキノコに入れる、という単純な遊びだが、やってみるとわかるが、チップはなかなか高くは弾かない。
こんなゲーム、子供にはさぞ人気がなかっただろう、と思いきや、今でもあるらしい。さすがにドイツだ。こうした素朴でかなりの忍耐が必要なおもちゃが今でも作られているとは。。。
プラスチックと書いているが、実はベークライト製だ。だから、色味が落ち着いていて美しい。
「今度の週末、お天気が悪かったら、このゲームしてみようよ!」とパートナーを誘った。
彼は返事もせず、ただ、うぇ〜!という顔を私にして見せた。
ま、彼がこんなのするわけないよなぁ。。。
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