私のパートナーは、旅行に出かけると必ず帰ってきてから体調を崩す。
彼の体つきはというと、胸板も厚く、腕っ節の強そうな腕、ビール腹は愛嬌としてもなかなかに頑丈で少々のことにはびくともしない感じがする。
しかし現実は、繊細この上ないのだ。
土地が変われば、お腹を壊す、枕が変われば、眠れない。
まさに深窓の令嬢ならぬ、真綿に包つまれたおぼっちゃまのよう。。。
そういう私は、芯が細くていかにも繊細そうだが、その実、どんな境遇でも生きていけそうなほど、頑丈にできている。
数年前、友人とマレーシアを旅行した。
食の醍醐味は屋台、というわけで、みんなで怪しげな屋台巡りをした。
速攻、お腹をやられたのは、私ではなく、彼。帰国を一日伸ばさなくてはならないほどに重症となり、さんざんだった。
今回も週末を利用して出かけたら、ドイツ国内の旅行だったにもかかわらず、昨日からダウンしている。
見かけが立派なだけに、その苦しむ様子は何だか滑稽なのだが、彼の前では一応神妙に心配顔をして甘やかす。
私がちょっとでもツンケンした受け答えをすると、
「病気の人間を前に、よくもそこまで冷たくなれるねぇ。」
と、ふとんにくるまってすねてしまう。
そんな彼がブランケットにくるまって観ていたのが、日本映画。
アニメの実写版。この映画はひどかった。。。
日本ではどのような評価をうけているのかは知らないが、見ているのが恥ずかしくなるほどだ。
パートナーが言った。
「日本人の俳優がカッコつけていいのは、侍映画。ビジネススーツを着て、粋がっても滑稽なんだよ!」
これは言い得て妙だ。
かなり前に、トム・クルーズが着物を着て、侍風に刀を振り回した映画があったが、これも正視するのが耐えられないほど恥ずかしい感じがした。
めったに着たことがない着物でも、私たち日本人が着ると、ピタっとハマるが、ロングドレスなど着ると、どうにもサマにならないのと同じだろう。
これが、伝統、あるいはアイデンティティということなのかなぁ。。。
以前、私はハープを習ったことがあると書いた。
2年間習ったが、その間、違和感の塊だった。小さな金髪の少女と一緒に習うことに感じていたのではない、ハープと私の組み合わせが、ジクソーパズルの合わないピースを無理やり押し込めた、そんな落ち着きのなさを感じ続けていたのだった。
ベークライト製のメトロノームを見つけた。
西ドイツ製とあるので、1948年から1990年の間に作られたことになる。誰にも使われなかったのか、まるで新品のような品。1895年に創業されたこの会社は、今なおメトロノームやマイクなどの製品を作り続けている。
乳白色のベークライトは、黒く光沢のあるピアノの上にあるだけで絵になるはずだ。実用としてももちろん完璧に機能するが、インテリアとしても美しい代物。
メトロノームのように規則正しい生活と、きっちりとした食生活をしていけば、パートナーの弱い身体は健康体へと変わってくるはず。
しかし、言うは易く、行うは難し。。。
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