旅行をするのはいつだって楽しい。
私は仕事を持っているので、気軽にヒョイと旅にでることはできない。また同時に仕事をもっているからこそ、旅行をするチャンスに恵まれることもある。
その中で、「ここに住みたいなぁ」という場所はいろいろとあるが、突き詰めて案外真剣に考えてみると、私の場合は次の二都市をあげたい。
ウィーンとアムステルダム。
ウィーンは今なお優雅で美しい。ドイツ語圏で言葉にも困らないし、とにかく栄華を誇った昔を今なお体験できるような美しくエレガントな街は、大いに私の好みだ。
それとは、180度違って、アムステルダムは開放的だ。家々は日差しをいっぱい取り入れるかのように大きな窓が並び、家の中を窺い知ることができる。壁には大きな絵や写真を掛けている家が多く、明るくリベラルな雰囲気を感じる。
また街中に網の目のように広がる運河も気持ちを開かせてくれるような気がする。
言葉はオランダ語、ドイツ語と英語を足して二で割ったような言語だが、多くの人たちはドイツ語も英語もとてもよく理解できるとのこと。それなら、私でも住めそう。
もう一度ぜひ訪れたいところは、スコットランドだ。
広大な自然がやはりとても魅力的だった。
原始の地球はこんな感じで始まったのではないか、と思わせるような荒々しい自然にはまさに息を飲む。
そのスコットランドを訪れたのは、もうかれこれ15年くらい前になる。
そこで、またまた私はやらかしている。
まずレンタカーを借りて、足の向くまま、気の向くままに出かけて、好きな場所で宿を取ればいいなどと、旅慣れた風なことをしたのがだいたいの間違いだったのだ。
現金を持ち歩くのは怖いので、カードを握りしめてエディンバラから車でスタートした。
田舎道にはほとんど車はいないし、道行く人もいない。
ただ、羊たちの渋滞に悩まされたくらいで、本当に気持ち良く、口笛を吹きながら快適に旅は始まった。
その日の夜に泊まったホテルは、質素だが清潔で気持ちの良い宿。
宿のご主人の奥さんが料理をふるまってくれて、ものすごくゴージャスな食事をも楽しんだ。
いつもずっこけている私にしては上々のスタートだ。
「そんなぁ〜!」
次の日の朝の私の第一声。
カードが使えない宿だなんて、知りもしないから安心をしていたが、現金オンリー、と宣告されたのだ。
お財布の中の現金は最小限。
ここでみんな使ったら、細々したものを買うとき、困るんだけど。。。と思いつつ、支払いを済ませた。
宿のおじさんは、
「これから先も、カードが使えるところ、少ないかも。。。」
と気の毒そうな表情で小声で私に言った。
私は、どうにかなるさ!と腹をくくるようなところがある。
太っ腹、肝が座っている、などと長所として捉えられることもあるが、現金なしでは太っ腹も肝も座ってるもないのだ。
さすがに冷や汗が流れる。
このまま現金なしだと、いったい私はどうすれば良いのか? パフォーマンスをしてここで稼ぐべきなのか。。。
とにかく、探すべきものは観光地ではなく、ATM。
不審車両のように低速でぐるぐると街の中を車で探し回る私。
今のような物騒な時代だったら、絶対に誰かに通報されて警察署に引っ張られていたような気がする。
街からちょっと離れた羊ばかりが目につく場所に、なぜかぽつんとATMがあった。
これを見つけた時の感動たるや、今でも胸がときめくほどだ。
スコットランドといえば、今でもATM。
でも、この命の恩人のATMのおかげで、私は残りの旅を十分すぎるほどに堪能したのだった。
今日の紹介は、旅のお供のスーツケース。
それも単なる旅行用のスーツケースではない。いろんな付属品がセットになっている。
化粧水入れ、おしろい粉入れ。ブラシやハサミ、鏡にバンドエイド、そして石鹸まで。至れり尽くせりの旅行バッグ。
さらに言えば、化粧水などの瓶はすべてガラス製である。(だから。。。空の状態でもこのスーツケースはかなり重い。。。)
この旅行のバッグからこの化粧セットだけ引き抜いて、ホテルの洗面にそのまま立てかけて使用することができる。
付属の鏡は立てかけて使えるように工夫も忘れていない。
ここまで揃ったスーツケースを私は見たことがない。
このバッグのメーカーも時代も不明だが、唯一石鹸のパックに書いてある文章から、それとはなしに時代を推し量ることができる。
“LUXOR heisst jetzt LUX” (LUXORは今からLUXとなります。)と書いてある。つまり、石鹸の名前をLUXORからLUXに変えた時期、ということだ。調べてみると、1950年頃だろうか。。。
1950年頃といえば、戦後の復興のために人々が一丸となって働き、希望を感じていた時代だと思う。
生活も落ち着き、人々は小さな幸せをかみしめることができたのではなかろうか。。。
そんな目でこの旅行バッグをみると、なんだか幸せの詰まった希望に満ちたオーラを放っているようにも見える。
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