先日、姉が電話をかけてきた。
何の用かと思ったら、蛇の夢を見たという。
なぁ〜んだ、そんなこと、と思ったが、あまりに真剣なので、話に耳を傾けた。
とにかく蛇が部屋中に渦巻くようにいっぱいで目が覚めた時にはひやっとした汗をかいていた、と言う。
夢診断をネットで探したら、何か良くないことがあるか、お金が入るか、だそうだ。
姉は悪いことがあるんじゃないかと気を揉んでいたが、
宝クジでも買えば、案外大当たりするんじゃない?、と進言しておいた。
電話を切って、私も小さい頃に天井から壁からぎっしりとカエルがひっついている夢を何度も見ていたことを思い出した。
なぜ、カエルなのか、といえば、こうだ。
その当時、私たち家族は、父の転勤に伴って、かなり山奥の小さな町に住んでいた。
家だけはばかでかく、昼でも暗い北側の廊下はお化けでも出そうな雰囲気があり、絶対にそこは通らないようにしていた。
昔の家だったので、もちろんサッシ窓ではなく、木枠にガラスが入ったちょっと建て付けが悪い窓が並んでいた。
そのせいなのだろう。
私が寝起きしていた部屋の障子の桟に桟と同じ薄茶色に変色したカエルがちょこんと鎮座していた。
当時10歳くらいだっただろうか。緑色の小さなカエルしか知らなかった私は、色がすっかり変わったその小さな生き物が薄気味の悪い小さな怪物のように感じた。
その日の夜から、このカエルがびっしりの夢を見るようになったのである。
あの当時、チューリップの花が開花したら、牙をむき出しにした怖い形相の女の子が出てくる夢とこのカエルの夢を繰り返し、繰り返し見ていたような気がする。
昨年、ラオス旅行をした。
ある日、1日掛かりで奇岩があちこちに点々とある不思議な場所へとでかけた。
とにかく、舗装道路の方が珍しいくらいで、貸切のワンボックスカーが転倒するのではないかと思うほど右に揺れ、左に揺れを繰り返し、到着したのは、あたりがすっかり暮れてしまったころだった。
ホテルはバンガロー式になっている、と感じの良いオーナーが話してくれ、私たちは部屋の鍵を受け取った。
とにかく、あたりは漆黒の闇なのだ。鍵をもらっても自分のバンガローまでたどり着くことができるのか、というほど。
私たちの部屋には、今にも消えそうな電球ひとつ。静まった部屋からは何かゴソゴソする音が部屋のあちこちで聞こえるが、暗くてその正体を確かめることすらできない。
シャワーは、ぬるま湯になったり、水になったりを繰り返し、自分の足元すらよく見えない。
お化け屋敷よりずっとリアルで怖い。
さらにベッドに足を入れると、山の只中にあるから、じっとりと湿った感触がもうホラーそのものだった。
パートナーは、笑って、
「これぞ、ラオスの醍醐味だよ。」と抜かしていたが、
私よりも気味悪く、怖がっていたのを私は知っている。
そしてその夜、私は久しぶりにそのカエルびっしりの夢を見たのだ。
何十年ぶりだろう。。。朝起きて感動を隠せなかったくらいだ。
朝、バンガローから早々に起き出して、母屋の方に行くと、オーナーが私たちに勧めた。
「ここの湧き水は美味しいので有名なんです。大変美しい珍しいカエルがいることでも知られています!」
今日の紹介は、こちら。
ドイツ語で「Kurglas (クアグラス)」とか、「Baederglas (ベーダーグラス)」と呼ばれる温泉水を飲むガラスコップ。
Bad Elster (バード・エルスター)はチェコにほど近い小さな街で、温泉保養地として知名度がある。
日本では温泉、といえば老若男女が楽しむことができる娯楽施設を思い描くが、こちらでは治癒目的に出かけるために温泉施設はあり、間違っても若者同士のお泊りの場所にはならない。
前にVichy のグラスを紹介したが、このグラスもそれと同じように、温泉水を飲むためのグラスだ。
もちろん、お土産の要素もあり、このグラスは吹きガラスで絵や文字は手書き。そしてガラスのストローまでついている。
地元住民が手分けをして作った感がする、とても微笑ましいようなグラスだと思う。
1910年代、バスケット付きVichyグラス (以前Vichyグラスについては紹介した。カゴがついているところがかわいい。これも温泉水を飲むグラス。)
このグラスは、とある蚤の市で、おじいさん二人組が仲良くお店を出しているところで見つけた。
「Kurglasなんて集めてるの?」と一人のおじいさんが私に尋ねた。
「Vichy (ビシー)のグラスを以前見つけたから興味があって。。。」と言うと二人で長々と温泉の効用を語ってくれた。
「ところで、どこから来た?」と訊かれたので、日本だと答えると、
おじいさんたちは、髪の毛のほぼない頭を何度も何度もなでまわしたり、叩いたりして
「まいった、まいった!温泉の国の人にうんちくを垂れてしまったよ。こりゃ、恥ずかしいなぁ!」と顔を真っ赤にしている。
なんともかわいらしい。
このグラスをおじいさん達に突き出して、割れないように新聞紙で包んで欲しいとお願いをした。
彼らは、二つ返事で包んでくれた。
何重にも何重にも包むものだから、おしまいにはサッカーボールほどの大きさになってしまった。
どうしてこんなことになっているのかと訝しく思ったら、おじさんが言った。
「日本に持って帰るんだろう?これなら多分、割れないから大丈夫だ!」
最後まで、お茶目なおじいさん達だった。
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