我が家には11歳のメスの秋田犬がいる。
犬天国のドイツでは、大抵の場所には犬同伴が許される。
そしてまた、犬に対してとても優しい国民だ。
散歩に出かけると、様々な人たちに声をかけられる。
さっきも三人組のおばさんに声をかけられた。
「知ってる、知ってる、その犬。。。なんて名前だったか。。。そう、合気道っていう種類の犬よね!」
「あ」と「き」は確かに含まれている。
「リチャードギアが出てて、合気道が主人公の映画あるわよね!ハナ子だったかなぁ。。。涙なくては見れないわよね。この犬もハナ子みたいなの?」
ハチ公がもしもメスだったら、ハナ子と名付けられていたかもしれない、 と思えば反論もしにくい。
みんな好意的に、友好的に話しかけてくれるのに、当の我が家の秋田犬は効かない鼻を地面にこすりつけて、クンクンを繰り返している。
まぁ、その素っ気なさが我々のハートを掴むのかもしれないが。。。
話変わって、私のパートナー。
彼は、大変女性にモテる。
女性といってもかなり高齢の方々。
散歩をしていても、街中を歩いていても高齢女性に声をかけられる。カフェの隣の席が高齢女性の集まりだったりしたら、ほんと、大変な人気ぶりで私は蚊帳の外におかれてしまう。
「私の好みよ」
などと大胆発言をするおばあちゃんまで現れるのだから。。。
パートナー曰く、15、6歳の頃にはすでにそのオーラを放っていたらしい。
私の高齢の母も、実は彼のことが大好き。
つまり、彼の人気はインターナショナルなのである。
まぁ、彼が高齢者になった暁には、やっと年齢差がなくなって釣り合いがとれるわけだから、その時が彼のモテ期、ということになるのだろうか。。。
せいぜい、長生きをして、このモテ期をぜひ堪能していただきたい。
今日の紹介は、フランス製のタッカー。
これも、パリに旅行した際に訪れた蚤の市で手に入れた。
私はシャイなので、あまり人と話すのは得意な方ではない。
しかし蚤の市などに行くと、案外と話をしている自分がいて、内心いつも驚いている。
蚤の市に出しているおじさんたちは海千山千の人たちが多いので、会話で口を緩ませて、ついでに財布の口を開かせる技を持っているのかもしれない。
だから、大抵の場合、売り手のおじさんとは、仲良くなれる、と自負したいところだが。。。
このタッカーを買ったおじさんは、一言も私と喋ってくれなかった。
「これ、おいくら?」と声をかけた。
返事はない。
「古いタッカーですよね。」
返事をしない。。。
ここで引き下がるのも癪なので、タッカーを指差し、腕を組み首をかしげるゼスチャーをしてみた。
かれは、笑顔も見せず、価格らしき数字を指で示した。
「高いヨォ」
と人差し指を横に振って示した。
かれは、ふんっという顔をしてそっぽを向いたが、おもむろに古い小さなメモ帳のようなものをこのタッカーと突き出し、
「一緒でどうだ?」
と示した。
じつは、このメモ帳は1920年代初頭の絵葉書セットだった。
それでも高いなぁ。。。と思った私は、また指を広げたり曲げたり、おおげさに身振り手振りを交えて奮闘した。
おじさんはしゃべることができないんだ、とこの時確信した。
結局はおじさんの出してきた値段よりもちょっぴりとお安くはしてもらったのだが、
この一言も言葉を発しない値引き交渉は、今までの中で一番苦労したやり取りだった、と言えるかもしれない。
タッカーと絵葉書セットをゲットして、他のお店を冷やかしていたら、あの手話のおじさんが口角泡を飛ばして
なにやら議論しているのを見かけた。
「なんだ〜おじさん、しゃべることできるんじゃん!」とおじさんに近寄りかけたがやめた。
また、身振り手振りでやられたんじゃ、たまらない。
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