オペラほどはまりやすい物はない、と友人が言っていた。そんなにいいのかなぁ、と半信半疑で彼女と観に出かけたオペラに完全にやられてしまった。

というのは、今から十数年前のことである。日本でのオペラ鑑賞はかなり高価で、世界的に有名な歌手が出演する場合ともなると、チケット価格がさらに数十倍にも跳ね上がり、、オペラと言えばかなりの有閑マダムか、深窓の令嬢の趣味のように思われるのではないだろうか。。しかし、こちらでは、席さえ選ばなければ案外お安く鑑賞できる。年間チケットも販売されていて、幾つかのオペラをいつも同じ席で楽しむこともできる。

私は、のめり込むととことんまでやらないと満足できないタチだから、この時期は毎週末オペラハウスに出かけた。天井桟敷が一番お安いのだが、ここは学生、そしてオペラを知り尽くした真のオペラファンの席で、私のようなにわかファンが顔を出すには、少々気が引けた。

多くがイタリアオペラなので、舞台上部に字幕が出てくる。しかし当時、私はそんな字幕を読む余裕も理解力もなく、ひたすら家で解説本を読んで予習をしてから臨んだ。「蝶々夫人」では隣の席のおじさんがこっそり涙を拭くのを垣間見たり、「リゴレット」では、マントヴァ公爵のテノールの声が裏返って、大きなブーイングが響き渡ったこともある。それら一つ一つが、新鮮で楽しかった。つまり、私はオペラに魅せられたのも確かなのだけれど、その雰囲気や人々の反応や佇まいにのめり込んだのだと思う。

今は、そのオペラ熱は引いているのだけれど、街角の広告塔にあるオペラのポスターを目にすると、あの熱に浮かされたような気持ちと浮き立つような開演前の雰囲気が蘇ってくるのである。

 

遠くからオペラを楽しむ為に必須なのは、やはりオペラグラスだ。

私は、女性的な優雅なオペラグラスより、どちらかというとキリッとした男性的ともいえる、だけれども小ぶりで粋な物の方が好みだ。

 

 

ローデンシュトック製のオペラグラス。

ローデンシュトック社は1877年にドイツのヴュルツブルグでヨーゼフ・ローデンシュトックによって精密機械の会社として設立された。1883年にはミュンヘンに移転をし、今なお品質第一主義を貫く光学機器メーカーである。これは、不確かではあるが1950年代のグラスだと思われる。

女性でも持てる小ぶりな大きさと、シンプルな形が実に上品で美しい逸品である。

オペラグラス(ローデンシュトック)

1950年代

h5,0 x w10,0 x d3,5 cm

 

散歩のお供にもなりそうな小ぶりさがまた良い。

散歩のお供にもなりそうな小ぶりさがまた良い。

後方にあるのがケース。こちらもシンプル、かつしっかりとした作りで、オペラグラスを保護してくれる。

後方にあるのがケース。こちらもシンプル、かつしっかりとした作りで、オペラグラスを保護してくれる。

愛着の持てる物が身近にあるだけで、暮らしは豊かを増す。

愛着の持てる物が身近にあるだけで、暮らしは豊かを増す。

 

 

 

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