私は、もうかれこれ15年近くドイツに住んでいるのだが、ドイツの祝日が全く頭に入っていない。
昨日は一部のドイツの地域だけの祝日、Maria Himmelfahrt(聖母の被昇天)だった。この日は、カトリックの勢力が強い地域しか祝うことをしないので、ドイツ国内でも祝日ではないところもある。
私の住む地域は、どっぷりカトリックなので、昨日は休日だったのだ。
朝普通に起きて、我が家の秋田犬と隣の公園に散歩に出かけたが、人っ子一人いない。
普通なら、ジョギングをしている人、私のように犬の散歩をしている人、自転車で公園を駆け抜ける人。。。朝からこの公園は結構にぎやかなのに。。。
とある映画を思い出した。
“Die Wand”(壁)という、確かドイツの映画だった。。。
ある女性が、週末に知り合いの山小屋を訪れる。彼らはその夜、パーティに出かけるはずだったが、彼女だけ体調がすぐれず、山小屋に残る。
明くる朝、彼女は知り合いが戻ってきていないことを不審に思い、車で探しに出かけた。
けれど、ある場所で車は何かに激突する。目には見えない透明な壁だ。
彼女はいろんな場所を走り回るのだが、ある程度走ったら、必ず車はその透明な壁にぶつかってしまう。
周囲に張り巡らされた透明な壁の中に閉じ込められる形になってしまった彼女は、知り合いが残した犬と、取り残される。
誰もいない。あるのは自然と彼女と犬だけ。。。
たった一人で、食べることのできる野草を探したり、リンゴを収穫する。冬に備えて、薪を割る。
自給自足とはこんなに大変なことなのだ、と感情移入してしまう。
それよりずっとずっと辛いのは、孤独だ。
彼女は残された犬と会話をかわし、文章を綴る。
犬は亡くなり、そして最後のろうそくの火はもう消えそうになる。
到底ハッピーエンドではないだろう、その結末を最後まで描ききらないまま映画は終わる。
派手なアクションも恋愛もなにもない、ただ淡々と一人のサバイバルを描いていくその映画は、深く深く私の胸に残った。
「秋田犬と私。。。あの透明な壁の中に取り残された?」
まさに、私はこの映画の状況と同じではないか、と太陽がいっぱいに輝くにもかかわらず、背中のあたりがゾクッとした。
お天気も輝くほどに良い。絶好の芝生刈り日和だ。
こちらでの夏の風物詩と言っても過言ではないのが、この芝刈り機を動かす「ブーンブーン」という音。
お天気が良い日になると、必ずどこかでこの音がしている。
私などはこの音を聞くと、「はやく、芝刈りをせんかい!」と急かされているような気がする。
芝刈り機を出して、さぁ動かすぞ!という段になって、はてな?と思った。
こんなに良いお天気なのに、どこからもあの「ブーン、ブーン」がきこえない。
そこでやっとこの朝からの一連の不思議な謎が解けた。
今日は、祝日だったのだ。
こちらの日曜日、祝日は殊の外やっかいだ。
大きな物音をたてることができない。
我が家は一軒家なので大丈夫だが、マンションにお住いの方々は、釘一本トンカンするのもためらわれる。
昔、私はマンションの最上階に住んでいた。下に住んでいたのは温厚そうな年配夫婦。
普段はにこやかで親切だったが、日曜日や祝日にちょっとでも大きな物音を出そうものなら、速攻、我が家に飛ぶようにやってきて雷を落とした。
最近の若い方々はそこまで厳しく言わなくなったようだが、それでもルールは今もって有効なのだ。
私もおばあさんになったら、
「まぁ、日曜日というのに、うるさいよ!」
なんて言うようになるのかもしれない。
今日の紹介は、万年カレンダー。
その昔、お土産屋で売られていたようなチープな品だ。
これはドイツ中北部のハルツ山地のお土産品。
ハルツ山地といえば、昔から神秘の山とされ、魔女伝説でも有名なところである。
ゲーテやハインリッヒ・ハイネなどドイツのそうそうたる知名人もここを訪れている。
丸い部分を一回転させると日付がかわり、台座のつまみを回して、月と曜日を変える。
日付を変える度にカチャカチャとおもちゃのような音をたてる。そこがまたチープ感を煽っていてなかなか良い。
しかし見かけによらず、この手の品は案外に高価な値段で取引されるのだ。
貴重な物は、時代が移り変わっていっても人々が守り、丁寧に扱うので、今にまで残るのだろう。
こうしたお土産品などは多くの人々が記念に買っていったはずだ。
しかし安いお土産品の運命で、ぞんざいに扱われたり、簡単に捨られてしまったりで、意外にも今に残っていないのかもしれない。
万年カレンダー2 (結構万何カレンダーは好きで集めていて、いろいろと持ってます!興味のある方はどうぞお問い合わせくださいね)
どういう経緯かわからないが、これは今に残り、私のベッド脇の小さな引き出しの上に鎮座している。
たまの傷は、万年カレンダーの運命だから仕方がないのだが、私に祝日を教えてはくれない。。。
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