週末に昔私が住んでいた街に出かけた。
と言っても、ふらりと出かけたわけではない、残念ながら仕事。
この街には、3年間住んだ。海外で暮らすのが初めてで、とにかく毎日、毎日が新しいことばかりだった。
子供のように五感すべてを働かせて、この異国の地を感じようと、そして自分のものしようと必死だったような気がする。このドイツの小さな街の全てが美しく感じたし、ドイツ語を話す人々が全て素敵に見えた。
今だから言えるのだが、あの3年間ほど足が地についていなかった時はなかったように思う。
もちろん、ドイツ語も形相を変えるほどに真剣に学んだ記憶がある。
しかし。。。
一向に身につかなった。
ドイツ語の先生は、日本語が大変上手な先生だった。先生は日本語で、今日のレッスン内容を説明する。習うことは、ほんのちょっと。あとは先生を囲んでお茶を飲む、日本語ではなしながら。。。
イラン人、韓国人、ケニア人の友人ができた。みんなに共通の言葉はドイツ語だったので、ドイツ語が上達するかと思ったが、みんな、あまりに下手なドイツ語だったので、いつもジェスチャー大会を開いているようだったなぁ。
とにかく、必死なのに空回りばかり、それでいて、ドイツのことは何でも知っているかのように振舞っていた。
だから、この街に来ると、あの頃の記憶が鮮やかすぎるほどに戻ってきて、気恥ずかしさでいっぱいになる。
あの頃からすでに10数年。街を移りはしたが、どうした縁なのか、このドイツに腰をおろしてしまっている。
ベークライトの温かみというか、独特の色味というか。。。に惹かれて何となく集めていたが、最近、どうもベークライトの方から私のところにやってくるような気がする。
初めは私の片思いだったベークライトが少し私に興味を持ち始めてくれた、ということかも。。。
1909年に創業したタバコ会社のMAHALESI ZIGARETTENは、現在はすでに会社をたたんでしまっているようだ。オリエンタルなタバコを扱っていたようで、このタバコのケースもどこかしら、そうした雰囲気がある。
中央に金色のシールのようなものが貼ってあるのだが、うっすらと25という数字が見える。25周年記念なのだろうか。。。
面白いのは、このタバコのケースには、タバコはすでに入っていなかったが、別な物が入って、私の手元にやってきた。
中を開けると、青いガラス製で、金色のナンバーがふってあるおはじきのような物がたくさん出てきた。多分、何かしらのゲームに使ったのではないか、と思う。
捨てるには惜しいタバコのケースを、ゲームの道具入れにしたのだろう。
子供達が、お父さんのタバコのケースを失敬してゲームの道具入れにして大事にしていたのか。
友人たちとタバコをくゆらしながら、ゲームに興じた若者のものだったのか。。。
恋人の吸っていたタバコのケースに、ひっそりと彼との笑いながら楽しんだゲームの時間を閉じ込めたのか。。。
いろんな想像が駆け巡る。
ヴァレンタインデーは過ぎてしまったけれど、私の初めて住んだドイツの思い出は、初恋の思い出みたいだなぁと帰りの列車の中で思った。
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