私は、宵っ張りなので、ベッドに潜り込み、早々と電気を消して眠ることができない。
前の日に夜更かしをしたにもかかわらず、朝早く起きなくてはならない日の朝などは、起き上がれないでぐずぐずしているベッドのなかで、誓うのだ。
「今日の夜こそ、早くベッドに入ってゆっくりと眠るぞ!」
だが夜になると、目は冴え冴えとするし、シリーズ物のテレビは見たい、やりたいこともある、そして本も読みたい、
なんとか早めにベッドに入っても、本を読み始めると眠たくなるどころか、小説に入り込んでしまってページをめくる手が止まらない。
私のパートナーは、食べると眠くなる、暗くなると目が閉じる、気持ちの良い気温になるとウトウトする、という未だに赤ん坊のような人だ。
ベッドの中で読む本は最高の睡眠薬になり、本を開いたかと思うと、もうトロンとしている。
コンサートやオペラ、ややもすると映画まで、周囲が暗いと必然的に目が閉じる。閉じるだけなら良いが、いびきまでかいて周囲を唖然とさせる。
列車や飛行機の旅も、心地よい温度と安心感がさえあれば、あっという間にポカンと口を開けてお休み。。。
本当に幸せな人だなぁ、と思う。
私は神経質なタイプではないと思うけれど、公共の場で眠る、ということができない。
でも、実は一度、大失敗をやらかしたことがある。
教員になったばかりの頃。
始発のバスに乗り、最終のバスで帰る毎日だった。先生と呼ばれるにはあまりに無知な新任教師の私は、毎日毎日が緊張の連続で、ヘトヘト。
帰りのバスでは、乗り込んだその瞬間に爆睡していたような気がする。
そんなある日。
目が覚めたのは、寒いからだった。
あたりはとても静かで、自分はどこにいるのか、何をしていたのか、何時なのか。。。
とにかくまるでどこか知らない惑星にでもいるような不思議な気分だった。もちろん、寝ぼけているだけだったのだが。。。
真っ暗で、とても静かな場所がどこか全くわからない。とにかく、時計を見ると、夜中の3時過ぎだった。
だんだん我に返って周囲を見回すと、どうやら自分はまだバスの中にいる。
つまり、バスの運転手さんは、座席の後ろの方で丸まって爆睡していた私に気がつかず、バスを車庫に入れて帰ってしまったようなのだ。。。
「しまった!」と思ってももう遅い。
バスには鍵がかかっていて開かないし。。。朝まで待つしかない。
夜中の3時にバスの中で目覚めるなんて、そう誰でもできる経験ではないが、同時に絶対にしたくない経験でもある。
寒くて目覚めたのだから、それ以降眠ることもできず、暗くて何もできない。。。
とにかく、始発の運転をするためにやってきた運転手さんを見た時には、天の助けだと思った。
後にも先にも、バスの中で一夜を過ごしたのは、この時だけだ。
今日の紹介は、目覚まし時計。
今日、蚤の市に出かけて見つけた。
「動くんだよ。耳を近づけてごらん。」と売り手のおじさんは人懐っこく私に言った。
耳なんか近づけなくても聞こえるほど大きな秒針の音がカチカチとする。
おじさんは、
「今は目覚ましだって携帯だろう、味気ないよねぇ。音だって自由に決められるじゃないか。この目覚ましなんて、そういうわけにはいかないよ。大音量でジリジリっと鳴るんだ!」
私の片手にすっぽりと収まるほど小さい目覚まし時計だが、サビ具合といい、イラつくほどに大きな秒針の音といい、そして全く狂いなく動く性能に魅せられて手に入れた。
Kaiserという時計メーカーは、実は1973年に倒産をしている。
そして、この時計には、小さくmade in germanyと明記がある、つまり、この時計は戦前のものだと思われる。
ドイツの東西統一は1990年、その前にはこの会社は倒産をしているわけだから、戦前の分断されていなかったドイツで作られたと判断しても良いのではないだろうか。
そんなことを思い浮かべながら、地下鉄に乗っていたら、いきなり大音響が響いた。
「ジリジリジリ!」
周囲の人たちは、怯えている。
最近はテロ情報が溢れかえっているせいか、みんな過剰に反応する。
そういう私もいったいなんなのだろう、と周囲を見渡した。
どうやら音源は地下鉄の席に座っている私の膝元の袋の中からしていた。
そう、いきなり目覚まし時計が鳴り出したのだ。あのおじさんのいう通りだった、大音量!
こんな目覚まし時計を、あの新任教師の頃、毎日持ち歩いていたなら、決してバスで一晩を過ごすなんてこともなかっただろうに。。。
目覚まし時計は過去にもいろいろと紹介してま〜す。こちらからどうぞ! (古い目覚まし時計って、コロンとした形も色合いもいいですよねぇ!)
No Comment